「恋は合コンから降ってくる」

ETC サンプルストーリー使用台詞セット:E-01



な、出ようぜ…

週末の社会人同士の合コン。
あたしの隣でふんぞり返って、やたら不機嫌な表情の彼は今夜の一番人気。
綺麗な顔立ち、冷たい視線、無口な表情。
だけど、だれもの視線が彼に集中してるのが分かった。
そんじょそこらにいない美形だもの。この際愛想がないのも全部無関係でのねらい所?
「出ようって…カラオケはじまっちゃってるじゃない?」
既に2次会のカラオケボックスで一部が熱唱してる。
さっき、ここに来るまでに彼に何か言われたような気がしたけど、よく分からなくて友人の影に隠れてしまった。そのあと、帰るって言ってたはずの彼がしかたなさげに二次会に参加してきたので、女性陣は大はしゃぎ。だけど、隣の席の争奪戦やってたのに、それに参加してない一番隅にをいたあたしの隣に割り込んできた。
あたしは静かな余生が送りたいのに…
その冷たい視線で女性陣を蹴散らした後、気だるげに水割りを飲みながら歌いもせずあたしの横で…
この手はなんなんでしょう??
誰も見てないところであたしの手握ってません??
「あの、この手…」
わかんない?誘ってんだけど。
「へ??あたし??」
それともみんなの前でお持ち帰り宣言でもされたいの?
あたしは必死で首を振る。
「な、なんであたし??」
「オマエ、騒がないから…」
それだけの理由??ただ単にあたしは、本日の人数あわせで呼ばれただけの存在で、あの本気モードのおねーさま方と違ってお腹が大きくなればいいっていう給料日前の食事組だったりするのに…
普段こんな場には顔出さないし、だから慣れないし、別に急いでカレシが欲しいわけでもない。
「だ、だめだよ、先輩方に怒られちゃうもん。あたし食事しに来ただけだし。」
「なんで?やっぱオマエ最初から見てても変わってるなって思ったんだ。料理必死こいてぱくついてるし、誰が話しかけても上の空だし…」
「え?誰か話しかけてたの??あたしに?」
誰かが話しかけるほど、あたしって魅力無いのに…胸もぺたんこ、子供みたいな顔してるし、気の利いた話なんかできないよ?
「ったく、…この隙に、さらって行っちゃうのもアリかな、とか思ってるんだけど…いい?
「へ?」
「だってお子様は人さらいに攫われて、教育されるって決まってるだろう?オイ、出るぞ、そっち!」
ノリノリの曲でみんなが拍手喝采、立ち上がって盛り上がってる後ろを指さされ、そのまま出口におしだされる。

「あのう、ココで何するんですか?」
「………」
連れてこられたのは夜景の綺麗な海辺の公園。寒くはないけど、ベンチに座って夜空見上げてるだけ。
星は綺麗だ、うん。
「男と女が公園に来てすることと言えば?」
「えっと…天体観測?」
「馬鹿か?」
ばしっと頭殴られる。
何よ、今日逢ったばっかりなのに…でも雰囲気は怖目だけど、不思議と気を使わない人だなって思った。
「じゃあ、散歩?」
「もう、いい…オマエさ、」
「ん?」
天体観測の如く、ベンチに腰掛けたまま真上を向いてたのを無理矢理彼の方を振り向く。
滅茶苦茶変な恰好〜〜
俺、本気で行くわ。覚悟してて
本気って何だろうと思ってると、じっとこっちを見つめた挙げ句ちゅってキスされた。
「あ…」
…誘ったお前が悪い。
「さ、誘ってないっ!!」
誘った。その目が悪い。
「んんっ」
あたしはその後も、何度も唇を塞がれ、絡み合うキスというモノを教え込まれ、ぼうっとしたままベンチ放置されていた。
立ち上がった彼が何かをしてる。
「オイ、これ…オレの番号とメルアド。登録しておいたからな。電話したら必ず出るんだぞ?いいな?」
「は、はいっ?」
いつの間に?あたしの携帯取り出したの?
「じゃあ今夜は送るから…」
スタスタと歩き出す彼はそのままタクシー乗り場まで早足で歩いていく。あたしは必死に後を追いかけるしか出来なかった。

結局住んでるアパートの前まで送られてしまい、彼はさっさと帰っていった。
それから、彼から毎日メールが来る。
<今夜逢えるか?>
だったり
<オレは残業、オマエは?>
なんて簡単な短い文ばかり
さすがのあたしも
<今日は部内の飲み会です>
とか
<残業ないから帰ります。>
と、ごくごく簡単な返事ですませていた。
後で聞いたら、これですら、彼にとって精一杯のアプローチだったらしい。今までの彼は自分からしなくても向こうから寄ってきたから必要のない努力だったそうだ。
でも、あたしにはそれが理解出来てなかった。
だって、あたしってカレシいない歴=生きてる年数なんだもの。いきなりこんな大物が引っかかるなんて、自分に自信がないから、あり得ないと思いこんでいた。
だって、高校の時に言われたんだもの
『悪い、オレロリコンの趣味ないし、出来れば凹凸のはっきりした子がいいな。』って。
同じグループで、すごく仲のいい男の子こだった。
初めての告白は玉砕。女扱いすらもして貰えなくて…
だから
<明日、逢おう。7時半に会社の前で>
そんなメール貰っても、素直に<はい>って言えなくて。
返事出来ずに、そのまま電源落として寝てしまった。

翌朝、会社の前に居たのは彼だった。
ま、まちぶせ??
「お、おはようございます…」
あの7時半って朝の7時半だったの??
「8時か…時間勘違いした訳じゃなかったんだな?」
「はい?」
時計を見た後、あたしの腕を掴んでビルの影に引きずっていく。
「メールだよっ!!返事ないし、電話しても電源切ってるし…7時半ってオマエのことだからかんちがいしてちゃいけないと思って。」
そこまで酷くありません!そう言いたかったけど、真剣すぎて、その目が。
「あの夜からオマエの顔ばっかりちらつくんだよ。思い出したらムカつくぐらい鈍感で、どうしようもないほどお子様なのによ…オレの好みとは180度違うって言うのに…」
それはあたしの責任じゃないと言わんばかりに背の高いその人を睨み上げる。
そんな目で見るなよ...今夜行く。空けとけよ
「今夜?」
「ああ、残業入ったから何時になるかわからねえけど、オマエのアパートに行くから、鍵開けとけ…」
「えっと、」
『それは危険じゃないでしょう』かと口にしたら
『このぐらい危険だな。』
またキスされた。
朝一で、いくら化粧の薄いあたしでも塗ったばかりのグロスが彼の唇についてしまう。
「あ…」
思わず指でそれをこそぎとると、その手を掴まれた。
掴まれた拍子に引き寄せられ、覗き込まれて、その視線の強さに思わず顔を逸らした。
待てよ、絶対目逸らすな
拭った指先を彼の舌がちろちろと舐めとって居るのが分かる。顔が戻せるはずはない。もう、耳まで真っ赤になってしまってるはず…
「こっち向けよ、もう逃げられないんだから…オレも、オマエも」
ゆっくりと視線を戻す。
うん、わかってた。否定しても消せない自分の中にふくらんで消えない熱い塊。飲み込むことも吐き出すことも出来なかった。
逃げられない、そう言われたときに、その塊がゆっくり溶け始めた。
「今夜、の意味わかってるよな?ゆっくり進めてもいいけど、オマエぜってー逃げ出しそうだから、今夜速攻オレのにするから、にげんなよ。」
ようやくその腕から解放されるには<はい>と頷くしか方法はなかった。

bykeikuishinbo

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